宮沢けいすけ KEISUKE MIYAZAWA
2020年12月6日
台湾のオンラインディベート
唐鳳(オードリー・タン、台湾デジタル担当大臣)の言葉。
「There is crack in everything and that’s how the light gets in」
(すべての物にはひびがある。そして、そこから光が入る。)。世界は完ぺきではありません。私たちの行動が、生態系を壊すこともある。自然界、人間界のシステムの構造的な問題に、一緒に取り組むことができる。それがここにいる理由です。欠陥はあなたが貢献するための招待状です。
台湾でも、ネットワーク上で進む、参加型民主主義が始まっている。
2014年、台湾で中国とのサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」が台湾の国会で採決を強行。それに抗議する形で学生が立法院本会議場に突入、台湾史上初めて市民による議場が占拠された、「ひまわり運動」が起きた。
当時の報道によれば、市民の間で法案の内容だけでなく、その決定プロセスの不透明性にも不満が渦巻いていた。
それがきっかけとなり、タンが参画していたg0vは省庁の約1300すべてのプロジェクトの予算配分、研究計画、KPIが分かり易く可視化され、同じ分野に興味がある人と話すことができるオープン・ソース・コミュニティを創設。
現在は1000万人が利用している。
そして、タンと11名のg0vのボランティアと共に取り組んだのが「vTaiwan」である。
vTaiwanは質の高い審議によって大きなグループを導くプロセスであり「対話を重視するメソッド」である。実際にこれを使ってライドシェアリング(Uber)規制に関する議論が行われ採用された。
オンラインディべートの空間に参加した人々は、いくつかのコメントに投票を促される。
「Uberは禁止すべきだ」「厳しく規制されるべきだ」といったものから、「市場に任せるべきだ」などといったコメントだ。
数日経つと、大まかに反対派と賛成派の相関関係が可視化される。そして、不思議なことが起こる。サポーターを得たいと思ったメンバーは乗客の安全や保険といった多くの人が賛同するコメントを投稿し始めるのだ。
その後、徐々に意見は洗練され、投票が蓄積されてゆき、最終的には大多数の人によって受け入れ可能なコメントに集約されてゆく。
「vTaiwan」のオンラインディべート空間。どこに分断があり、どこにコンセンサスがあるかを明示するMAP。コメントしている人の顔が見え、投じられるのは「賛成」と「反対」のみで、対立や批判を誘発する「返信ボタン」がないことも、実装成功の重要な要素とされる。
その後これらのアジェンダを元に、専門家、ステークホルダーと実際に対面で灯篭会を行い、その様子をライブストリーミングで公開する。
ポイントは
・アジェンダを設定する力があること
・ライブストリーミングを通じて議論を発展させられることが、
多くのステークホルダーとの協議が鍵になる。
日本で参加型民主主義を始める上でも、多くの鍵を教えてくれた。
2016年1月、総統選挙で民進党の蔡英文が総統となり、36歳という若さでオードリー・タンはデジタル担当大臣に就任した。日本では広く、新型コロナウイルス対策で台湾の天才として名前が知られたが、16歳の時にインターネット・ソサエティと呼ばれるガバナンスに関する奇妙なコミュニテとの出会いが始まりとのことだった。