宮沢けいすけ KEISUKE MIYAZAWA
2020年12月5日
民主主義の回転速度を上げる
地方議会選挙等で選挙で当選した暁には、4年間の自由が与えられる。
変化の速い時代において、有権者における選択の機会が少なく、一方で当選者は安定した収益を与えられる中で楽な方に動く。それが有権者からの関心を無くしている一つの要因と考えていた。唐鳳の話はまさにソーシャルネットワーキングの時代にあった選択肢である。
(落合陽一と唐鳳との対談から)
選挙で決められる投票権を勝ち取った台湾において、「投票=祝祭」とのことだった。
日本では勝ち取ったという認識が不足している。
日本は台湾でいう祝祭性が失われた状態。日本が祝祭性を回復するには?もしくは台湾が将来祝祭を失った場合、どう再着火すればいいか?
唐鳳 投票のレベルを変え投票の「回数」を増やす。投票の項目を細分化し、数秒でも時間があれば投票できるようにするのが鍵。民主主義の「回線速度」を上げることが大事。
4年に1度の選挙で済ませるのは旧式のコンピュータを使い続けるようなもの。アクセスの回数を増やせば増やすほどフィードバックもアップデートも多くなる。それが「新しい民主主義」のあり方。
落合 台湾約2300万人、日本約1億2600万人と人口規模が違う。日本のような人口規模の多い国で「新しい民主主義」は可能か?
唐鳳 物理的にひとりひとりの意見を聞いて回るなら、古代民主主義が行われたギリシャの都市国家の規模が限界だろう。でもデジタルは違う。デジタルのネットワークはスケールフリー(1つの情報を無限に拡大・共有できること)だ。皆にとって価値があると判断された情報は、すぐに世界中に拡散される(東京都のコロナ対策サイトにプログラマーとして参加した事例を紹介)。ネットワークの中で民主主義的に導入されたアイデアは「スケールフリー」。どれだけ規模の大きな人口に対しても広がり続ける。このような新しい民主主義のやり方を広める上でも日本と台湾の距離は近い。物理的な距離の近さではなく、テクノロジーのレベルが同じくらい高いこと。進んだテクノロジーがあれば進んだ理想を叶えることができる。民主主義は完成された「化石」ではなく、「人の生活を便利にする生きたテクノロジー」。
落合 どうやって生きた民主主義を進化させていくか。そのカギになるのが「多様性」。民主主義の中でどう多様性・多元性を確保していくか。日本のいいところ・悪いところがある。多様な文化圏であれば「ほどほど」な価値が割とある。つまり、お互いが理解しえないことに関して「ここまでは理解しよう」という相互理解のラインがある。単一民族が多い日本は、完璧に理解することに力を割いてしまう。カンペキを求めてしまう。8割できていればいいのに、残り2割を上げるために8割の時間を使ってしまう。そのおかげで、例えば子どもがいじめられる理由は皆が同じ規律を求めるからだったりする。ある程度「ほどほど」で成り立つようになると人の働き方や生き方が多様になる。テクノロジー的に前進した民主主義から生まれてくる(未来への)遺産(レガシー)は(これからの)人の多様性や時間の使い方に直接跳ね返ってくる。“ほどほど”のコンセンサス(合意)で多様でいられる社会へ。
―地球規模のコンヴィヴィアリティ。無限な可能性を持つデジタルな経済。そしてテクノロジーとしての民主主義。驚くほど明るい未来が説かれた今回。最後に聞きたいことは?ー
落合 「変わらないものって何だろう?」って僕はよく考えるんですよ。自然の形も変われば人の形も変わるけれど、その中で人の最もチャーミングなところはタンさんにとってどこですか?
唐鳳 人は賢人(サピエンス)ですから、知恵ですね。